精神科入院の末に肺血栓塞栓症発症。身体拘束で賠償請求
- 精神科入院の末に肺血栓塞栓症発症。身体拘束で賠償請求
精神科病院に入院した女性(当時54)が亡くなったのは、必要のない身体拘束が原因だったとして、遺族が病院側に約6200万円の損害賠償を求めた裁判で、東京地裁は9月9日、「拘束に必要性があった」として、請求を棄却した。
●身体拘束は不要だったとして提訴 女性は2016年1月、東京都内の精神科病院を受診し、躁状態と診断されて入院となり、その日から身体拘束の措置を受けた。
入院の8日目に意識をうしなって、搬送先で数日後に死亡。死因は肺血栓塞栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)だった。
遺族側は、身体拘束には必要性がなく、肺血栓塞栓症の予防措置をとらずに身体拘束をおこなったことが、注意義務違反にあたると主張。
さらに、医療事故調査に応じなかったことが死因解明義務違反にあたるとして、2018年7月に病院を運営する医療法人社団を提訴した。
●女性の夫は「暴れたりしていない」 遺族の代理人弁護士によると、東京地裁は、身体拘束以外に代替方法がないと病院側が判断したことに合理性、妥当性があるとした。
ほかの主張についても違反があったと認めなかった。
判決後の記者会見で、代理人の三枝恵真弁護士は「カルテに記載のない主治医の証言にもとづき、客観的証拠のないまま事実認定された」と批判した。
女性の妹は「公正な裁判がおこなわれると信じていた。衝撃でした」とうつむいた。
女性の夫は「判決について大変残念に思っています。
入院前日、診察室で妻とずっと一緒でした。暴力をふるうでもなく、暴れるでもなかった」と話した。 遺族側は控訴を検討している。(引用ヤフーニュース)
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■身体拘束の末、エコノミークラス症候群
★そもそも身体拘束とは?
身体拘束とは、文字通り、体を拘り、束ねる。
動かせないようにしちゃうことですね。
そんなの虐待じゃないの?
違法だ!
人権侵害だ!
っていう人が多いと思うんですけど、一応国の定めるルール的にはほかに手があるんだったら拘束しないほうがいいけど、方法がないんだったら仕方ないよね?
という事で、違法でも何でもない正当な行為になっています。
国が代表的な例としてこれは拘束当たるよ?
っていう項目の全例を記載しておきます。
国がはっきり『身体拘束』と認める全例
もうこの記事を見ている人はさすがにどんなものか想像がつくとは思うんですけれど、一応ご紹介しておきますね。
① 徘徊しないように車椅子や椅子、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
② 転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
③ 自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。
④ 点滴、経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。
⑤ 点滴、経管栄養等のチューブを抜かないように、または皮膚をかきむしらないように、 手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。
⑥ 車椅子や椅子からずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y 字型抑制帯や腰ベル ト、車椅子テーブルをつける。
⑦ 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるような椅子を使用する。
⑧ 脱衣やおむつはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。
⑨ 他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る。
⑩ 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。
⑪ 自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。
(引用元厚生労働省「身体拘束ゼロ作戦推進会議」2001)
あとは自分たちで考えてね?
国がはっきりと指定したものは全部で11個…。
まあ具体例をあげたらキリがないんでしょうけれど…。
自分達で考えてくれってことで、特に介護施設では
『身体拘束ゼロを目指して』
というスローガンがあったり、身体拘束=虐待
という事でよほどのことがない限り施設では身体拘束をしません。
ちょっとでも身体拘束になりそうな事案はなるべく避けて介護をします。
病院では特に治療を的確に行わないといけない命の危険があるため治療優先の元身体拘束は施設よりかは比較的行う…。
というのが実情になります。
身体拘束に至るまでの三原則
福祉職、医療職はそんなにポンポン身体拘束をするわけじゃないんですよね。
それだけわかってほしいんですが、一応ステップとして
「切迫性・非代替性・一時性」
が認められていることを前提に身体拘束の手続きに入ります。
ちなみに【公式】ケアマネ介護福祉士は10年以上前に1度経験があるだけで、あとはありません。
切迫性
切迫性とは、
「利用者本人または他の利用者等の生命または身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと」です。
身体拘束による心身のダメージを十分に考慮し,本人の生命や身体を保護するうえで身体拘束が必要かどうかを確認しなければなりません。
つまり、もうどうにかしないと危険だよ?っていう状態の事です。
たとえば、病院であれば錯乱していて自分の体をひっかいて傷つけまくるとか…。
高齢者や術後であれば、両足手術してとか、大病の末で筋力ゼロなのにベッドから降りてひっくり返って解放骨折しそうだとかそういう状態ですね。
他にも職員を含めた他者を今にも傷つけそうだ…。
なんていうのも切迫性に入ります。
大事なのはまさに今その状態という事…。
(○○しそうだという感じで、しているわけではないからなんか矛盾しているような気がしてしょうがないけど…。)
非代替性
非代替性とは、「身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がないこと」をさします。
本人の生命と身体を保護するうえでほかに方法がないことを複数の職員で確認することが求められます。
もう身体拘束以外に手は無いよね?
って言う状態です。
よく、『寄り添ってあげれば落ち着くから身体拘束はするな』
みたいな発言も聞こえるんですけど、『寄り添う』も耳障り良く聞こえるように言っているだけで、多くの場合は
『監視と抑制』である事に変わりありません。
しかも、じゃあ24時間自傷や他傷をしないように『寄り添うのか?』という話になります。
それは自費の家政婦さんを3人ぐらい雇わないと出来ない事であって、病院や施設でそれをやれれば身体拘束の必要性が無い。
代替可能とは判断しません。
あくまで医療、介護における代替があるかを判断します。
一時性
一時性とは、「身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること」です。
利用者の状態に応じて身体拘束はもっとも短い時間で実施されなければなりません。
一時性についても賛否ありますが、とりあえず拘束を一旦解いて、本当に梗塞が必要な状態かを確認する。
24時間365日やってはいけないよっていうルールですね。
ただし、これも本当に命の危険や他者への危険が無くなったかを充分に判断せず、自傷や他傷をしてしまったらそれも問題なのでその見極めも一人ではなくいろんな人が集まって慎重に判断します。
三原則を確認しても家族の同意がなくちゃできない?
同意がなくちゃいけないけど、罰則もない
【公式】ケアマネ介護福祉士もびっくりなんですが、家族の同意は得なければいけない…。
そんなのは当たり前なんですが、得なかったからと言って罰則は無いらしいです。
虐待への疑いや虐待認定の材料になっても、それ自体に違法性や罰則は無いんですね…。
今回引用した裁判の争点としては、エコノミークラス症候群にならない対策を怠った事と、捜査協力を拒否した点から捜査協力義務違反での裁判…。
もう身体拘束したこと自体は裁判の争点にすらならないようです。
裁判的に身体拘束が必要だったかどうかは既に論点から外されている
遺族、弁護士も既にそこは諦めている
つまり、論点が適切な身体拘束によるエコノミークラス症候群にならない様な予防措置をとっていたかどうかになっている時点で、身体拘束は正当な行為だったという事…。
もうむしろそっちの方が怖くないですか?
家族は身体拘束する必要が無かったんじゃないかみたいなことを会見で話しているのにそんなのもう大前提なんですよ?
家族曰く身体拘束する必要がなかった
ヤフーニュースの記事だけで推測するには情報が少なすぎますが、一応診断は躁病だったという事。
家族が面会した時にはきっと上機嫌でお話されていたんでしょうね。
躁病はざっくりまとめちゃうとテンション高い状態がずっと続き、多弁だったり攻撃的だったりと、ともかくエネルギッシュです。
病状がそうさせており、よく躁病の人はとんでもない物をノリとテンション(車や家とか太陽光パネルが多いイメージ)で契約してきたり、ちょっとした言動によって攻撃的になったりしますね。
家族さんはもしかしたら長年の付き合いで、どうやったら攻撃スイッチが入るのか何となく知っていて、無意識に避けていたのかもしれません。
医療保護入院(警察沙汰とかになって強制入院する)だったのか、任意入院(自分自ら、もしくは家族の意思で)だったのかは不明ですがいずれにしろ社会生活が送れず、病院での治療が必要だと判断した結果でしょう。
病院も社会生活の一部
躁病で、いつ誰に危害を加えるかわからない状態でその日のうちに身体拘束…。
ここは想像でしかありませんが、誰かを傷つけたか、自分を傷つけたうえでの入院でなければその日からいきなり身体拘束は無いでしょう。
この辺を考えると医療保護入院(強制入院)の可能性が高いのかなと個人的には思ってしまいます。
ちなみに精神病院と言っても、起立や社会生活があります。
ある程度社会生活が送れると医師が判断するまでは身体拘束や個室で、施錠された空間で観察されたりするでしょう。
勿論その間に不安や興奮を和らげる薬を身体拘束中に流し入れ、ある程度落ち着いて生活できるような投薬量を見極めます。
お薬のせいで毎日寝ているだけになっては治療とは言いませんからね…。
その辺を見極めるのにも、お薬を自分から飲めるような精神状態にまでまず気分を鎮める必要がある…。
そうじゃないと看護師さん達にも危険が及んでしまいます。
皆さん何となく薬で落ち着いて、他者とのトラブルが無いかとか、退院しても日常生活が送れるか?
みたいな事を判断します。
そこから社会生活に戻れるように集団理学療法的なリハビリとか社会生活に向けての作業療法的なリハビリを送っていくのが通常になります。
そんなリハビリの中にいきなり何の前触れもなく怒って危害を加える人が居たらみんな怖くなっちゃいますよね…。
今回の患者さんの場合も身体拘束が必要だと判断される何かが背景にあったのでしょうし、弁護士さんもその点については勝ち目がないと踏んで、論点を拘束中の血栓予防がなされていない事に絞ったのでしょう…。
現場と世間の常識がズレまくっている?
世間一般の皆さんがこのニュースを目にすると…
『精神病院は酷い所だ』とか『身体拘束なんて…』
って思うかもしれないんですけど、
ニュースで奇声を発しながら意味不明な事を言って刃物を振り回している人が逮捕されましたってたまに聞きますよね?
その人たちって、なんか危ないお薬でもやってるのかな?
って思いますよね?
そう言う人達が精神病院に来たりするんですけど…。
そんな人達に看護師さんとか、看護助手さん達は丸腰で挑めって言うのかって話ですよね?
ホントに病気で人としてのトリガーが外れているのですごい力です。
認知症の患者さんさんが警察官に掴まった時に骨折した話もあってきじにしましたが…
(詳しくはコチラ↓↓)
高齢患者さん対複数の屈強な警察官でもそうなんですから、お互い命がけの治療なんですよ?
身体拘束自体もボタン一つとか、書類一つで出来る訳ではないんですからそれだけは広く皆さんに分かってほしいものです…。
ケアマネ介護福祉士的に世間とのギャップが激しすぎる…
心療内科と精神科の違い…
もうね…。
日本が精神疾患大国みたいに言われて結構経ちますし、実際心療内科増えましたよね?
○○メンタルクリニックとか○○こころの医院みたいなのがすっごい増えたなって思っちゃいます。
確かに歯科医以上に初期投資なく開業出来ちゃいますもんね…。
上手くいけば歯医者さん以上に増える可能性あるなって思っています。
ただその一方で、心療内科と精神科の垣根が曖昧になりつつありますよね。
まあそれはそれで病気という受容が社会的に進んでるんでしょうから…。
代わりに自分は精神疾患じゃない…。
心療内科でちょっとお薬貰えば大丈夫…。
そんな風に考える人も増えたのかもなって思ってしまいます。
きっと今回引用記事にさせて頂いた遺族のご家族も本当は身体拘束についての不当性や苦しみを訴えたかったんだろうなとは思います…。
心中はお察ししますが、医療従事者さんが本気で命を張ってまで医療行為を行わないという事をご理解いただきたいものです。
医療従事者は神様みたいに見えても普通の人間です…。
刃物持った相手や、本気で殴りに来る患者さんを満面の笑みで抱きしめて側に寄り添うとかしませんから…。
ちょっと考えれば皆さんだってわかるでしょう?
医療従事者になった家族さんが
『患者さんにちょっと寄り添ってたらさ…』
ていってあざだらけで毎日帰ってきたらちょっと思うところあるでしょう?
病院はお薬の調整という手筈があるけど、介護従事者はお薬調整って即座には難しいの…。
利用者さんを家族に連れていってもらって…。
施設帰ってきてお薬飲み始めてもそんな急に効くわけじゃないし、お薬効きすぎてヘロヘロで倒れて怪我しても問題だし…。
だから介護従事者は傷だらけだったりするのよ…。
だからどうして欲しいとかは置いて置いて、そういう現実だって言う事をみんなに知ってほしい訳なのでした…。
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